因果は巡る

 前回の続き(1年後)

 今を遡ること二十数年前、小生は街のエレクトーン教室に通っていた。初めての舞台も経験し、やる気も出てくるかと思われたが、他の学校などとの対立はヒートアップし、やはり男の勝負は避けられぬモノ、相も変らずエレクトーンには寄り付かず、公園で走り回っていた。

 その間も教室の皆は修練を積み、アッという間に1年が過ぎて再び発表会の時期が近づいていた。
 S先生はある日曜日に自分を自宅に招きいれ、1曲のポップスを流し始めた・・・。ボンヤリと聴いた後、私は尋ねた。

 小生「これ何ですか?」

 S先生「今度キミが発表会で歌う曲だよ。」

 
 演目:ハウンドドッグ/ff(フォルティシモ)

 
 嗚呼、自分は1年前と何ら成長を遂げず、また同じ辱めを受けることになったんですね。分かりました。タンバリンでもマラカスでも何でもいいっすよ。いや、何ならリーゼントにして振り付けもいれましょかい。

 すっかり拗ねて投げやりな小生、しかし当のS先生は何だかノリノリで、

 「今年はキーボードで、そうね、ベースラインとか弾きながら歌うっていうのはどうかな?」

 なんて言っている。自分が興味なさげにしていると、何だか哀しそうな顔をしやがるので

 「分かったやる。タンバリンでチェッカーズよっかマシだしね。」

 とまたまた承諾(何様だ)。そんでもってまた教室の皆と一緒に練習したのだ。


 当時通っていた小学校の同じクラスにTさんという女子がいた。幼少の頃よりピアノを習い、その演奏は校内はおろか市内、いや県下に轟いていた凄腕のピアニストだ。何と発表会当日に彼女が見に来ていたのだ。
 昔から恥をかくのには慣れていたのか、さほど彼女の事は気にならなかった。そして本番へ、

 私は歌った。

 曰く、

 お前の涙も俺を止められない。今更・・・失うモノなど何も無い。

 曰く、

 あ~いが、全てさ。今こそ歌うよ。あ~いをこめて、強く、強く。

 キーボードでベースラインを弾きながらメロディを歌うというのは中々難しいものだが、今年も無事務めを果たした。S先生も喜び、300人の観客もまずまずってとこだった。しかし・・・・・

 同級生のTさんが自分の所に来た。労いに来たのか、カワイイ奴めと思いきや

 ボソっと一言

 「アンタの歌がなければ、良かったよ。」 と


 その後再びマイクを握ることはなく、時は過ぎていった・・・。

 Tさんは今もピアニストとして国内外で活躍していると聞く。当然小生がバンドを組み、奄美で活動していることなんて知らないはずだ。もし彼女と再会したとしても自分はライブには誘わないことに決めている。

 こう言われるに決まっているのだから・・・

 
 「アンタの歌がなければ、良かったよ。」 と


 
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by aonekoroman | 2008-11-16 12:05 | 実録☆管理人の戯言  

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