自由への旅立ち

 ある日曜の昼下がり、私のデスクの電話が鳴った。

 出てみると、40代後半か50代前半くらいの男性と思われる方でして・・・


 「もしもし、あの、つかぬ事をお尋ねしますが・・・。」

 「はい、どのようなことでしょうか?」

 「実は短歌を作ったんですが、俳句ではなく短歌です。」

 「短歌ですね。それは素晴らしい。」

 「ありがとうございます。それでお尋ねしたいことというのはですね・・。」

 「はい、どのような・・・。」

 「短歌はごく一般的に五・七・五・七・七ですよね?」

 「一般的には確かそうだったと・・・俳句が五・七・五・・・」

 「ですから俳句ではなく短歌・・・短歌です!」

 「は・・・失礼いたしました。」

 「あ、いえ、こちらこそ失礼。」

 「・・・・・・・・・・・・」

 「今度、皇族の方々も参加されるような吟遊会とでもいうんでしょうか・・・そのような行事に出品してみようかと思いまして、短歌を作ったんです。いや俳句ではなく短歌なんですが。」

 「それは風流なことですね。」

 「五・七・五・七・・・・五じゃダメなんでしょうか?」

 「はぁ・・・・・(?)」

 「ですから五・七・五・七・五では、やはりダメなんでしょうか?ダメですよね・・。どうしても終わりが五になってしまうんです!!」

 「・・・・・・・・。」

 「・・・・・・・・・・。」

 「い、いいんじゃないでしょうか・・・。」

 「・・・・え!?」

 「それにほら、字余りがあるんですから、字足らずがあったっていいんじゃないでしょうか?確か破調とかいう・・・とにかく、私はありだと思います。形式に囚われない・・・うん。さぞや素敵な俳・・・いや、短歌なんでしょうね。自信を持ってください!!」

 「あ・・・・・・ありがとうございます!!お忙しい所どうも失礼いたしました!!」

 「いいえ、あまりお役に立てなくて申し訳ございません。はい・・・はい・・・いえいえ・・・・あ、左様でございますか。それでは失礼いたします。」

 「失礼します!」



 私は胸が熱くなった。


 いつの時代にも、どんな世界にも革命は起こる。

 既存の概念を破壊し新しいものを生み出すビッグバン。


 私のようなヘッポコバンドマンなんてそれらにあやかって、畏れ多くもその上に胡坐をかいているに過ぎないのだ。

 私はあの時の男性が、大勢のやんごとなきお人々の前で、会心の「五・七・五・七・五」を、命がけの短歌を詠いあげる姿を想像してまた胸が熱くなった。

 

 私の職場にはこんな風変わりな問い合わせが時々ある。

 そして上記のやうな会話を、延々と交わすのである。


 ぶりりあんと。
[PR]

by aonekoroman | 2009-11-09 19:43 | 実録☆管理人の戯言  

<< みんな飛ばしすぎ♪ After School >>