After School

 彼は突然やって来た。私のデスクに肘をつき、薄ら笑いを浮かべ開口一番こう言った。

 その言葉は自信と尊厳に満ちていたことを覚えている。

 「昨日、かめはめ波出た。」

 ほう・・・・

 私は鼻の頭を指でこすり、同じく薄ら笑いを浮かべ、少し周りを見回しながら小声でこう返した。

 「オレ、どどん波出せるよ。」

 (・・・・・・・・・・・な、何?)

 明らかに彼はうろたえていた。このオッサン・・・何者?と顔に書いてある。

 彼は知っている。

 自分が嘘をついていることを・・・しかし信じているのだ。「かめはめ波」の存在を・・・。

 そして目の前で「どどん波が出せる」などとぬかす中年が言っていることは本当なんだろうか?と勿論考えていたはずだ。そして何よりも

 彼は知っている。

 「かめはめ波」より「どどん波」の方が威力が強いという説を・・・。

 後にはひけないのか、一瞬言葉をつまらせて(「じゃあ俺はギャリック砲出せるよ」と言ってくるかと思っていたが・・・)、恐る恐るきりだした。

 彼「嘘だろ?」

 私「フフ・・・試してみるか?」

 彼「い、いいよ・・・。」

 私「オーケー、じゃあ時と場所は後日改めて・・・こっちも忙しいんでね(笑)。」

 彼「う、うん・・・じゃ・・・また・・・・来る・・・・・・・・・。」

 私「おう!待ってるよ。ケリ着けようぜ♪」


 
 彼は2度と現れなかった。



 彼は私の言ったことを信じたことになる・・・。

 近い将来、彼は間違いなく気づくだろう。そしてこう吐き捨てるんだろうか。

 「あのオッサン超嘘つき!!・・・・・あ、俺も嘘つきだった。」

 もしくは

 「俺なんかの戯言に、マジでこたえてくれたイイ人・・・。」


 そして大人の扉を開けるのだ。


 それとも・・・


 かめはめ波が本当に出せるまで修行しているかもしれない・・・。

 そして彼が私の前に現れたその時には、私は人差し指を彼に向け、目を見開き、

 

 どどん・・・・・・




 私の職場には小さな図書室がある。

 
 日々訪れる子どもたちと、こんな会話を交わしている。


 わんだほー。
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by aonekoroman | 2009-11-08 18:19 | 実録☆管理人の戯言  

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